モノ・コトそして情報が溢れる中、何を基準にモノコトを選び
生活の中に取り入れているか....
PALM が注目する自分らしさをもつ方にスポットをあて
お話しを伺ってみました
「もの選びの基準は長く愛せるがどうかストーリーのあるものが好きです」
スタイリストとして女性ファッション誌のスタイリングのお仕事に邁進していた20代。スピーディに変化していくトレンドを体感できるこのお仕事は、“時代背景を反映させる” メディアとしての役割を担っていると自負していて、それはとても刺激的な日々でした。
でも自分自身の生き方というものを改めて考えた時、もう少し長い時間軸で向き合えるものを選べたら、と思うようになり始めて。ちょうど20 代後半です。流行りのお洋服をコーディネートしながら、でも自分が着ているもの、好きなものはずっと変わらなかったので、その存在は自分の中 に明確にあったのだと思います。意識し始めたのが20 代後半だったというだけで。そのタイミングで、ファッションだけでなく食にも携わるようになりました。オーガニック食材にこだわったレストラン・ラパスをオープンさせたのが9 年前。人の体の中に入るものを提供することに対して、とても責任を感じたのを覚えています。取引先予定の農家さんを回り、有機栽培や無農薬がどういったものなのか、一から食について学びました。そしてその時初めて、作り手側の多大なる苦労を知り、「オーガニックはいい!」なんて軽々しく口にできることではないとも痛感しました。当時は、その作り手側の努力や苦労が、消費者側にはまだきちんと伝わっていない時代。提供する食事もオーガニック食材を使えば、他のカフェとは価格設定が変わってきてしまいます。そしてそれを理解してくださるお客さまが何人いるのだろう、と考えた時、食だけではなく、今まで培ってきたファッションの力を筆頭に、全てを繋いで、全身全霊で伝えていかなければいけないと痛切に感じたのです。スペシャルな空間と最高の見せ方、おもてなし……。なおかつ生産者の方たちの対価に見合う“食”を提供したい。本当に良いものをどう伝えていけばいいのか、その真髄はこの経験で学ばさせてもらったと思っています。そして結果として、衣食住が私の中で1本の糸で繋がっていきました。それはプライベートでも同様で、そもそも自分自身がそうありたいって願っていたから、そこへ向かって行けたんだと思っています。
「もの選びの基準は一貫して、“長く愛せるものかどうか”。そして作り手の想いやそのストーリーが好きかどうか、です。私はスタイリストなので、誰かが作ってくれたものをコーディネートするのが仕事。だからこそ、作り手さんに対して常にリスペクトの気持ちがあります。“購入する” という行為が作っている方たちにボート(投票)する……そんな感覚に近いのかもしれません。インテリアは大好きな作家さんの椅子を集めています。50 年代の北欧では素晴らしい名作の家具がたくさんあり、シンプルで強度のある、どこから見ても美しい椅子があります。そういった、タイムレスな作品に囲まれた生活が心地よいです。
Vintage の家具は、それぞれの作られた年代のストーリーとトレンドが色濃く出ているものが大好きです。ブランドは問わず一目惚れしたものを購入しています。一期一会。良い仕立ての美しい家具は私たちの人生よりも長く生きていくと思います。そういったものに出会えた時、本当に嬉しい気持ちでいっぱいになります。私が座ってるこの椅子も25 歳の時に古家具屋で買ったもの。好きな年代に作られたイギリス製のヴィンテージで、ブランドものではありません。自宅はこういった20 代の頃からコツコツと集めた、お気に入りの家具ばかりで構成されているんです。
Fashion でも同じくシンプルで美しいものが大好きです。
スタイリングをするときにとても大切にしていることは、やはりストーリー。音楽やカルチャーに紐付いたファッションは、時代ごとの言語化されていない周波数みたいなもの。それを感じて表現することがとっても重要なんです。私自身の日常の中にも。シンプルなキャミソールとデニムのスタイリングに、天然石のジュエリーや、WOOD の太めのヒールを合わせると、70 年代の西海岸のウッドストックのような雰囲気になり、ドクターマーチンのブーツを合わせるだけでLondonのパンクカルチャーを感じるスタイリングになる。トレンド一つ生まれるのにも、歴史や、多くのデザイナーからの発信があります。時代が動くときには必ず理由があるから、それは何なのか?と考えています。
一つ一つのストーリーを知ることで、点だったものが、線となり、今まで以上にそのファッションを楽しむことができるように感じます。
(PALM を見て)今の機械編みだと出せない風合いで、少しレトロで懐かしい雰囲気がとてもいいです。縫い目がないので、脇下もちくちくせず、着心地も抜群! こういうデザインのものは、あるようで意外と見つからないんです。綺麗に出来過ぎてしまっていたり、平面的なデザインだったり。古着屋さんでやっと見つけても、あまりにも時間が経ち過ぎてちょっと古着感が強く、着こなせる自信がなかったり(笑)。探すのが難しいアイテムだからこそとても重宝しますよね。
私は、インナーとしてはもちろん、家では1 枚で。お出かけの時はデニムに合わせたいです。写真のように、麦わら帽子をプラスしても可愛いですね。
大切にしているもの1
『建築の本』
着物を着ると所作が美しくなりますよね。空間も同様で、素敵な空間に身を置くと、身のこなしはもちろん、心の置きどころも変わります。それを知ったことが、建築物やインテリアに興味を持ったきっかけです。
心地よいライフスタイルのヒントをそこからたくさんいただいているので、大切に保管して、時々開いています。本当に必要なものを、あるべき場所に置く。必要のないものは、置かない。身の回りが整うと、心や思考も整っていくように感じます。
大切にしているもの2
『小さな玉ねぎ』
小さいものは、父が愛情を込めて自家菜園で作ってくれた無農薬の玉ねぎ。
大きい玉ねぎは広島の日向農園さんで有機栽培されたもの。SNS で生産者と直接繋がり顔が見える方々が育てた野菜を食べることができる時代。とても贅沢で幸せなことです。
当たり前のことなのですが、自分や家族の心身を作る『食』はとても大切にしています。
家で過ごす時間。
ロング丈のキャミソールは、家で過ごす時間に最適。
締め付けもなく、心地よい肌触り
旅のお供にも持っていきたい一品です
スクエアに開いた襟元のデザインとレースの
コンビネーションがバランスよく。
何も考えずにさらっとデニムを合わせて、
そのままどこかへお出かけしたくなります。
Creative director / Lifestylist
大田 由香梨
スタイリストとして活動をスタートさせた後、住空間、FOOD ディレクションなど、衣食住<ライフスタイル>をスタイリングする” ライフスタイリスト” として活動。
現在は、自身が経営するヴィーガンカフェ「ORGANIC TABLE BY LAPAZ」の他、企業・ブランドのコンサルティングなど、クリエイティブ活動を通じて、豊かでサステナブルな未来のライフスタイルを提案している。